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2012年08月30日

続・きのこで染める

8月30日

前回に引き続き,能登いきものマイスター養成講座の課題研究で,きのこ染めに挑戦しました.
前回は,ヒイロタケとアカヤマドリで染めてみて,見事黄色に染まりました.

今回は,ロクショウグサレキンで青く染めてみよう,にチャレンジです.

珠洲の里山でたまたま見つけたこの倒木,青く染まっていますね.これはロクショウグサレキンというきのこが作る色素で染まっているからなんです.ヨーロッパなどではグリーンウッドとよばれ,工芸などに利用されるとのことです.

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ロクショウグサレキンには同属のロクショウグサレキンモドキがあり,子実体がないとどちらの種かはちょっと判りませんが,ロクショウグサレキンモドキのほうがやや多いようです(参考:北陸のきのこ図鑑).

ロクショウグサレキンについてはこちら → ロクショウグサレキン

この青く染まった木を削り煮出して色をとります.今回はノミとトンカチで砕きました.
こちらは砕かれてできた木片.

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お鍋で煮ます.木材に沈着した青い色素を抽出するために水酸化ナトリウムなどを入れてアルカリ性にします.今回は,染物で使われるネオソーダというものを使いました.中身はよく判りませんでしたが,お鍋はpH11になりました.

煮出した煮汁は,青くなるかと思えば真っ黒でした.木材はタンニンが多いようです.これで青く染まるのかしら(;゚д゚)ゴクリ…

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煮汁を染め液として使います.今回は初めてロクショウグサレキンを使い染めたので,色々試してみました.

まずは前回のアカヤマドリとヒイロタケを染めたやり方と同様の方法です.煮汁に布を漬けて,鉄,アルミ,銅イオンの媒染剤で染めてみました.

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また,還元剤であるハイドロサルファイトナトリウムを使った染め方も試しました.藍染めなどで行われている還元して染める方法で,不溶性の染料を還元することで水溶性にして布に染めるという,いわゆる「建てる」といわれる行程です.

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ネットで富山きのこ会がロクショウグサレキン染めについて紹介していましたので,それを参考にさせていただきました.
参考:富山きのこ会

染め液は真っ黒でしたが,ハイドロを混ぜたらさっと褐色に変化しました.タンニンが脱色されたのかもしれません.そこへ,絹と木綿の生地を投入しました.

暖めながら染めて30分,とり出してみます.
ハイドロで建てた方の絹の生地は酸素に触れると黄色からエメラルド色に変わりました.
木綿はごく薄く染まっています.pHを高めると木綿に良く染まるのではないかと考えてpH11にして木綿を染めてみましたが,中性よりもちょっと色が濃くなった程度でした.
媒染剤を使ったほうは,エメラルド色にはなりませんでしたが,緑茶色といった感じです.

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左上から,鉄,銅,アルミ
下段,木綿,木綿(染め液pH11),絹

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絹に良く染まるという事がよく判りました.
きのこからこんな美しい色が染まり,とても感動しました.

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気を良くしてストールを染めてみようということで2枚試しました.
1枚は絹,もう一枚はレーヨンと和紙(麻)の混合で,染まりやすいように下処理してあるものだそうです.
お鍋に投入して色むらがでないよう布を丁寧に揺らして30分,引き上げてみるとどちらも茶色っぽくなっています.でも空気に触れてどんどん色が変わっています.

弱酸性の水で洗い,干してようやく完成.

右が絹で左がレーヨン和紙.絹の方が緑色になっていますね.レーヨン和紙はタンニンもたくさん付いたのかグレーがかっています.絹ももうちょっと染まると良かったかな.

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今回初めて染物について勉強しました.染めの作業は化学そのものであり,様々な生物が染めに使われてきた歴史,染め方の工夫など,生物多様性とそれを利用する人間の歴史が垣間見れる面白い材料です.

能登の里山里海を体験するエコツアーの題材として,きのこ染めはとても可能性があるのではないかと感じました.
ぜひ多くの方に体験していただきたいです.


投稿者 赤石大輔 : 2012年08月30日 18:50

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