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2012年04月24日

写真集出版に向けて

私たちNPO法人能登半島おらっちゃの里山里海では,能登のいきもの写真集出版プロジェクトを立ち上げました.
お陰様で日々賛同していただいく方からご連絡がきています.現在も募集中ですのでぜひこの機会に,能登の里山里海を守り伝える活動にご参加いただければと思います.

内容は前回お伝えした通りですが,今回は写真の撮影者である渡部晃平氏の紹介をさせていただきたいと思います.

前回の記事はこちら → 奥能登の生きもの写真集出版プロジェクト

渡部さんは,愛媛大学大学院時代に能登を研究のために訪れ,能登の多様な生物が生息する里山で長期間調査を去れました.その際にとりためた写真の集大成が,今回の写真集となっています.
渡部さんが能登を訪れた当時の印象や,なぜ生きものの写真を撮ろうと思ったのか,そのあたりをお聞きしましたのでここで紹介させていただきます.


渡部晃平さん「写真集出版に向けて」

 僕は大学生の時に、ある昆虫写真家の写真に感銘を受けて一眼レフカメラを購入しました。しかし、良いカメラを買ってみたものの、被写体の昆虫に会うために遠出をしなければならなかったり、上手な写真が撮れなかったりで、ものの一ヶ月もしないうちに、部屋のオブジェとなってしまいました。それから一年後、インターシップという授業で能登半島を訪れました。能登半島の自然は、今まで通ったどんなフィールドよりも魅力的で、どこに行ってもたくさんの生き物で溢れていました。そこで、翌年は能登に住み込み、研究をする合間にもう一度写真を撮ろうと決意したのです。能登では、会いたい生き物にいつでも会うことができました。外に出る度に、「この素晴らしい生き物の姿を残したい!」という気持ちを抱くようになり、もっと魅力的に生き物の写真を撮りたいと思うようになりました。最初にカメラを買った時とは違い、毎日違う顔を見せてくれる生き物達の写真を撮ることが、楽しくて仕方がありませんでした。
 生物多様性には様々な力があります。植物から優れた薬ができたり、木々は二酸化炭素を減らしてくれたりします。そして、能登の生物多様性は僕の人生を変えてくれました。綺麗な蛍を見ること。美しい声を聴くこと。花の香りを匂うこと。美味しいキノコを食べること。興味を持った物に触ること。大自然は、どんな先生にも作ることができない、とても優れた教科書です。その中で自ら感じ、学んだことは、これからの人生でかけがえのない宝物になるでしょう。
 しかし、この素晴らしい自然が世界中で失われていることも事実です。図鑑を見て会いたいと思っても、会うことができない。しかし、能登半島にはまだまだたくさんの自然が残されています。僕が撮影した生き物達のほとんどは、里山という環境で生き、生かされています。里山とは人が管理をすることで維持されている特殊な環境です。能登半島は、その素晴らしい里山が世界中から認められ、世界農業遺産に指定されました。先人達が培ってきたこの里山を後世に残すためには、その魅力を知らなければなりません。この写真集を出版することで、能登半島にいる多様な生き物達を、よりたくさんの人に知っていただき、少しでも周りの環境に目を向けていただければ幸いです。そして、未来の子供達のために、豊かな里山を感じ、伝え、守っていきたいと思います。皆様のご理解とご協力を、よろしくお願いいたします。


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投稿者 赤石大輔 : 2012年04月24日 14:38

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