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2010年05月18日

保全林で植林

5月18日

自然学校が地域の方々と整備を行っている保全林で,アカマツの植林を行いました.自然学校の保全林では初めての植林作業となりました.荒れ果てた山をこつこつと整備し,再生が進んでいます.ようやく植林というところまできたか,と感慨深いものが在ります.
今回は,珠洲市のみさき小学校,西部小学校,大谷中学校から60名ほどの生徒さんが参加して,アカマツを植林してくれました.

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今回の植林の意義について説明いたします.
国連の生物多様性条約事務局の呼びかけによる植樹活動「グリーン・ウェーブ」という活動があります.5月22日が「国際生物多様性の日」と定められ,この日に世界で一斉に植林をするイベントがグリーンウェーブです.石川県でも昨年から参加しています.

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世界の多くの地域では植林が必要なことは明らかで,グリーンウェーブは大変意義のある活動であることは明らかです.しかし,里山の現状をご存知の方はご存知と思いますが,いまは植えるよりも伐採することが必要な森林が沢山在ります.里山林の現状について復習してみましょう.

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例えばコナラなどの薪炭林では30年周期で伐採し,萌芽更新させるサイクルが在りましたが,里山のバイオマスが使われなくなってから放置され,更新時期を過ぎてしまった林が多くなっています.こうなると,森林の土壌や光環境が変化して,キノコや林床植物の種類が変化し,多様性が減少することも在ります.里山の危機の一つです.

また,アカマツ林でも,年をとりすぎたアカマツが増え,マツタケなど有用なキノコに適さない林が増えています.かつてはこれらを伐採して,建材やマキなどに利用してきました.皆伐した場所には種から芽吹いたアカマツが成長しアカマツ林になっていくサイクルが必要ですが,現在は殆どこのような作業は行われていません.年をとったアカマツは,マツ枯れになりやすく,大量枯死という悲劇が待っています.

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このような,これまであった里山林のサイクルを復活させることが,里山の生物多様性を維持するための大切な手段なのですが,実際に行うには大きな費用がかかります.その費用を賄うために,里山の木質資源を有効利用すること,それを受け入れる社会の仕組みを作っていかなければ成りません.
ちょっと大きな話になってきましたので,自然学校の活動に戻りますが,実は昨年度,保全林のアカマツを40本ほど伐採しマキにしました.これを県内のマキを取り扱う業者に買い取ってもらうことになりました.九谷焼など焼き物につかわれるそうです.その伐採したエリアに,今回アカマツを植林したわけです.ほうっておいてもマツは生えてきますが,少しでも早く林に戻るように,3,4齢のアカマツを周辺からとってきて皆で植えました.
果たして子供たちに今回の活動の意義が伝わったか判りませんが,実はこういう意図があって植林したわけです.
これからも,珠洲で木質バイオマスの有効利用を考え,里山林の伐採と植林の作業を恒例化していきたいと考えています.

投稿者 赤石大輔 : 2010年05月18日 18:23

この記事へのコメント

 子どもたちには貴重な体験になったようです。会議が重なり参加できずに申し訳ありません。すっかりご無沙汰していますが気持ちはそちらに向いています。生物多様性は大切ですが、仕事の多様は避けたいものです。里山のすくすくした成長をお祈りします。

投稿者 クロメダカ : 2010年05月26日 13:30

クロメダカさま
有り難うございます.地域の子供たちが授業で里山に関わることが多くなってきました.能登らしい環境教育の取り組みが今後も広がっていくようがんばっていきたいと思います.

投稿者 akaishi : 2010年05月27日 10:37