2009年12月12日
レポート「トキのワークショップ」
インターンの渡邊君,毎日ゲンゴロウの調査に出ていますが,今回は金沢大学が実施してるトキのワークショップの取材をしてもらいました.
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今回のワークショップは3回目だそうで、イントロダクション、ヒアリング調査報告、トキが舞う里山づくりについてのお話、意見交換会といった内容でした。
イントロダクションでは中村浩二先生から、金沢大学の里山再生への取り組みについて紹介していただきました。この取り組みの中で一番印象に残ったことは、トキのために保全を行うのではなく、地域の方々のことも考え、配慮していることです。自然を良くするだけでは保全が長続きするとは思えませんし、本当に良い保全ができるとも思えないので、この考え方によるメリットはとても大きいと感じました。生物多様性を守る基盤として農業をしっかりと行い、人間の生活守ることを第一に考えます。その上で協力できる方から農薬をどんどん減らしていったり(農薬をやめろと強要しない)、池の管理を行ったりするという保全活動を任意で、それぞれの地域に合った方法で、その人個人のペースや意思に合わせてゆっくりと行えば良いという内容でしたが、とても的を射ていると感じました。
また、新潟県の佐渡の水田地域では、農家の方々が稲の収穫量よりも、「自分の水田にはこんなにたくさんの生き物がいるんだ」ということを自慢していると聞いて、とても新鮮な気持ちになりました。ここの地域では農家の方が一人一人自覚を持って、トキを保全し、『自然を良くする保全活動』、『人々の理解』、『地域の活性化』が両立していたのです。さらに、トキや生き物がいることを付加価値として利用し、米の買い取り価格を上げている事実にも驚きました。生き物やトキがいることを「田んぼが荒らされる」とネガティブに捉えるのではなく、「こんなに豊かな自然があるんだ」とポジティブに捉えること、それを保全現場に一番近く、保全を行うのに一番重要な位置にある地域の方々、農家さんに理解してもらうことがとても大切だと感じました。
トキ・コウノトリを呼ぶ会の,加藤秀夫先生のトキやサギの生態的な話については、たくさんの農家の方々が興味を持っておられていました。「トキはどれほど田んぼを荒らすのか?」「トキが来たらどうやって接していったらいいのか?」など、農家さんにとってはトキがやって来ることによる農業面での不安があるのだと感じました。逆に、たくさんの方による質問、意見があり、トキのための里山再生についての熱心さも伝わってきました。その他、昔の方々のトキを見た思い出話をお聞きしたのですが、昔はトキがいることが当たり前だったことが想像でき、環境破壊の残酷さを改めて感じました。
新潟の佐渡と能登の位置が近いことや、能登の環境からして、いつか近い未来に能登にトキがやってくるのは間違いないと思いました。そのための地域の方々の理解、里山再生は能登ではとても進んでいるので、このワークショップによる地域の一体化や勉強会はとても有意義なものだと思います。まだトキがいないこともあり、現実的な話は難しいとは思いますが、このような取り組みをずっと続けていき、日本で始めての実例になることを楽しみに待っています。また、この地域との繋がりの大切さや、自然があることをポジティブに捉える考え方は愛媛でも見習うべきだと感じたので、率先して実現できるように努力したいと思います。
投稿者 赤石大輔 : 2009年12月12日 18:19