2007年01月17日
珍客
自然学校の事務室は,旧職員室にあり,そこから校庭が見渡せる.
今日も事務室で仕事をしていたら,校庭の向こうから4人の子供達がこちらにやってくる.
2人は小さな自転車をふらふらとこぎながら,2人はその後ろを追いかけて.
私は立ち上がって,事務所の窓から手を振ると,自転車をこぎなら手を振ってこちらにやってくる.めいっぱいの笑顔だ.
「今日は木曜日だから早く終わってん」
どうやらここでは木曜日は半日授業らしい.
「ねえ,入ってもいい?」私は自然学校に子供達がやってきてくれたことを素直に喜び,
「どうぞ」とうながした.
「なっつかしいなー」
「おれ2年生までここにおってん」
「足冷たくない?スリッパ履いてきたら?」
「全然大丈夫.あでもやっぱ冷たい」
私は,子供達に自然学校の活動に参加してもらおうと説明を試みる.
「自然学校では里山の自然を保全…「あーチョコだ!いいないいないいな.」
話はチョコに遮られた.私は仕方なくチョコの袋を開けて子供達に配る.
「あのさ,里山って知ってるかな?里山っていうのは…「ねー,ここで隠れんぼしても良い?」
「いやだめだから」
二度遮られ,今度は少しきつい口調で断った.
「それじゃ3階いってみよー,音楽室はベートーベンがいて怖いはず!」
「いこーいこー」「足冷てー!」
ドタドタドタ,みんなで3階にいってしまった.私も追いかける.
「あーここ理科室や」
「ここ蛇おってん.それからザリガニもおるはず」
「あーあった,ザリガニでかい!」
その標本はどう見ても伊勢エビだろ.
「ねーこれもらっても良い?」
何でもほしがるな君らは.
「音楽室ベートーベンいないや」
「なんか全然怖くないね」
「つまんないね」
興味はすでに非常口に移っている.
「ここ開けとけばいつでも入れるぞ」
「いつでも隠れんぼできるね!」
お願いだから開けないで.隠れんぼそんなに好きか.
「もういいや,外で野球しよ」
「いこいこー」
嵐のように現れて去っていく.
子供四人ですごいパワーだ.
これが10人,20人となったら,収集つかないな.
子供達の自然学校への勧誘はあえなく失敗.
でも,久しぶりにこの校舎に子供の声が響き,校庭で野球をする姿が見られた.
また子供達来てくれないかな?
そして,俺の話を聞いてくれないかな?
そんな甘い期待を込めて,仕事に戻る.
投稿者 赤石大輔 : 2007年01月17日 15:13
この記事へのコメント
面白いね。子どもの姿がリアルに表現されている。小泊の自然学校の昼下がりの様子が浮かび上がってくるようです。続きを期待しています。
投稿者 uno : 2007年01月17日 19:28
unoさん
コメントありがとうございます.
徐々に地元の方々に自然学校を知って頂いている実感があります.
春までに体制を整えて,角間に負けないネットワーク作りを目指します.
投稿者 akaishi : 2007年01月18日 09:00
こういう記事を読むと,とてもうらやましくなります.
子どもが時間をみつけ,用事もないけれども遊びにやってくる.
自然学校の活動に参加するためではない,こうした訪問が実は大事だし,今後につながっていくのだと思います.
角間の里は,子どもが自分たちだけで来るには少々町から遠いです.結果,子ども達は親と一緒じゃないとこれない.勿体ないです.
小泊の施設は集落の近くにあり,子どもも自分の意志で遊びに来れます.子ども達が放課後にちょっと遊びにくる.そんな場所をつくっていってください.
投稿者 こうき : 2007年01月20日 10:19
旧学校裏のあたりの森林は十年程前の台風以来、荒れてしまいました。荒れた林には春先「たらの芽」がよく採れます。
三崎は以前、瓦工場がたくさんあった地域です。そのため、瓦用の土を採取した跡地があちこちによく残っています。そこは栄養分が少なく痩せた土壌です。そういったところに「しばたけ(あみたけ)」が生えます。また、薬草の「せんぶり」の自生がみられますよ。わたしは過去にここに勤めておりましたので、このホームページを懐かしく拝見させていただきました。子どもたちもそういった感覚で訪れたのかも知れません。
投稿者 ryo : 2007年01月25日 23:08
こうきさん
子供達が普段から集まれるような場所になればいいなと思います.
さらには地元の方々も日々訪れてくれる場所にしたいです.
ryoさん
ありがとうございます.小泊小学校はとても良い場所にありますね.
今度,アミタケやセンブリのある場所を教えて下さい.
投稿者 akaishi : 2007年01月26日 09:42
常駐研究員のブログが始まったのですね。
写真を見て、甥っ子の後ろ姿に似ているような。私もこの小学校に通っていました。私の頃は木造の平屋でしたが。いつも放課後は学校に入って自由に遊んでいたことが懐かしくなりました。廃校になった学校が皆さんの研究に使われることを聞いたときはとても嬉しかったです。
この学校が地域の人たちの学校として活気づくといいなと思っています。子どもたちはなかなか分かってはくれないかも知れないけど、自然の中で暮らしているので、生き物も植物もそこにあるものは何でも当たり前の存在なのだと思います。末永くおつきあいよろしくお願いします。
私ももう一度そこで暮らしたいです。
投稿者 ビンゴ : 2007年02月10日 08:48
ビンゴさん
コメントありがとうございます.
もしかして甥御さんかもしれませんね.
小泊で仕事をしておりますので,いつでもお越し下さい.
投稿者 akaishi : 2007年02月13日 16:04
去年の夏、東北の某所で社員と家族が参加する「自然学校」を企画しました。都会の子供たちは自然の中でちゃんと遊べるのだろうか??という主催者の心配をよそに、子供たちはムシトリアミとカゴを手に、田んぼの畦道を、まさに野生児そのものになって駆け回っていました。「ひ弱な都会の子供」は世を忍ぶ仮の姿だったようです。子供は野に放すのが一番。あの子供たちの姿をもう一度見たい、今年or 来年の夏、「里山里海自然学校」でそれを再現したいと密かに企んでいます。子供たちにつきあうオバサンとしては、かなり疲れるのではありますが、、、、、。腰も痛いし、五十肩もつらい、、、、。
あ、地元の子供たちとの交流もできたらいいなー、企画のMenuが一つ増えそうです。
投稿者 NI : 2007年02月25日 15:32
NIさま
コメントありがとうございます.
ご提案大変うれしく思っています.
里山里海自然学校では,里山里海の大切さを,
人と自然が共生して生きる未来を,
子供達に伝えられるような自然体験プログラムを考えています.
都会の子はもちろん,地元の子も一緒になって,
能登の自然を知り,経験としてもらいたいです.
これからもどうぞよろしくお願い致します.
投稿者 akaishi : 2007年02月25日 18:25